【今回の質問】
子どもが心を開いてくれません。私の対応の仕方が悪いのでしょうか。


子どもの可能性を狭める「決めつけ言葉」

 この子は勉強が嫌いみたい。何度言っても、言い訳ばかりして、なかなか取り掛からない。それに比べて、同じクラスのAちゃんは勉強が好きな優秀な子。Aちゃんの親御さんはいいな〜と、羨ましくさえ感じてしまう。
子育てをしていると、こんな思いになることもあったりします。しかし、それって本当なのでしょうか。本当に、この子は勉強が嫌いで、Aちゃんは勉強が好きなのでしょうか。
勝手な思い込みで、子どもと関わってしまうと、親子の関係性が悪化するばかりでなく、子どもが心を閉ざしてしまうことにも。ついついやってしまう、親の勝手な「決めつけ」について、理解を深めていきましょう。

【目次】
 ・「決めつけ言葉」が表れる背景
 ・本当の気持ちを知るための工夫
  - 傾聴する
  - 質問する
  - 観察する

・「決めつけ言葉」が表れる背景
 一つの事実に対して、私たちは自分なりの解釈をしています。そして、その解釈は「〇〇に違いない」と、「決めつけ言葉」となって表れます。これまで見聞きしてきた経験や、持っている知識が、決めつけの背景にあります。これまでの経験や知識に基づき、無意識に行われてしまいます。

うちの子は、勉強に取り掛かるのに時間がかかる

うちの子は勉強が嫌いに違いない
いつも勉強をやりたくないと思っている

Aちゃんは勉強がよくできる子と聞いた
 ⇒
Aちゃんは勉強が好きに違いない
親が言わなくても、自らやっているはずだ

確かに、これまでには「勉強は嫌いだ」という発言があったのかもしれません。しかし、今日もそうだとは限りません。さらに、明日もそうだなんて、誰にもわかりません。日々、変化する子どもに対して、「〇〇に違いない」と決めつけてしまうのは、考えものです。
親の言葉は、子どもに大きな影響を与えます。「勉強が嫌い」と決めつけられれば、「自分はそういう子どもなんだ」と、思い込んでしまうかもしれません。「本当は違うのに…」と、真の気持ちを言えなくなってしまうかもしれません。「どうせ自分は…」から「言っても無理だ」と、心を閉ざしてしまうことにも。
決めつけ言葉は、子どもの可能性に蓋をしてしまいかねません。

・本当の気持ちを知るための工夫
 どうすれば、子どもは心を開いてくれるのでしょうか。遠回りのように見えて一番の近道は、子どもの気持ちを理解すること。すぐには理解できずとも、理解しようとすることが大切です。例えば年頃の子どもで、日常あまり会話がなかったとしても、子どもの気持ちを知ろうと歩みよってみましょう。
子どもの本当の気持ちを知るための3つの工夫をご紹介します。

>傾聴する
 子どもの現状に不満があると、どうしても、言葉数が多くなってしまいます。しかし、子ども子どもの気持ちを知るためには、「聴く」ことがスタートです。心を傾けて、子どもの言わんとしていることを聴く「傾聴」を意識しましょう
「この子は何を言いたいのだろう」と、推測しながら耳を傾けます。アイコンタクト、相槌、うなづき、オウム返しを意識すれば、子どもは心の内を語ってくれるようになるかもしれません。「そうか、そんな気持ちだったんだ」「なるほど、そこが難しかったんだ」と、気持ちの代弁をしながら聴いていくと、子どもの心は緩みそうです。子どもの本当の気持ちに近づくことができるでしょう。

>質問する
 心の中はいつも混雑しています。頭の中も常に渋滞状態です。何から話していいのかわかりませんし、何を伝えたいかさえもわかりません。特に、感情が動く場面では、自分の気持ちを整理して伝えることがとても難しくあります。
「質問」を意図的に利用しましょう。共感的に寄り添った上で、質問を投げかけると、子どもの心に風穴を開けることができるかもしれません。本当の気持ちが引き出されることもあるでしょう。

「そうか、大変だったんだね」
「本当はどうしたかったのかな?」

ただ、ここで意識をしなければならないことがあります。それは、子どもからの返答は「必ず一旦は受け止める」ということ。「勉強をする意味がわからない」等、もしかもすると親の意に反する返答が返ってくるかもしれません。しかし、そこで否定するのはNGです。「そうなんだね」と、一旦は子どもの気持ちを受け入れ、その後自分の意見を伝えるといいでしょう。

>観察する
 子どもは、すべてを語りません。特に思春期には、親に言っても仕方ないと思ったり、親に心配をかけたくないと思ったり。心を閉ざしたかのように見える場面も多々あることでしょう。
言語コミュニケーションが取りづらい時には、「観察」をしましょう。子どもの表情や態度を観察し、言葉にならない声を探ります。「話したくない」という子どもの気持ちも尊重する。無理に言葉にさせずに、ただ隣に寄り添ってあげるだけでも、十分受け止めることができるでしょう。焦らずゆっくり、まずは子どもの気持ちに寄り添って…。「わかってもらった」という経験を積むことが、子どもの心の開示につながるかもしれません。

 

 親子の関係には、上下があるわけでもなく、主従があるわけでもありません。相互に尊重しあい、家族として相互に補完し合う関係です。そんな関係性に向かうためには、互いに相手を理解することがスタートです。しかし、願いや思いが強ければ強いほど、「どうにかしなければ」という思いが出てきてしまうのも、また事実です。
子どもの理解に向かうために、「いまここ」に目を向けていきましょう。自分の中で、無意識な決めつけが起きやすいことを自覚し、それが「勝手な決めつけ言葉」となって表れていないか、時に振り返っていく姿勢が大切です。

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