【今回の質問】
子どもにもっと自信をもってもらうために、親としてどう関われば良いのでしょうか

本当はできるのに、人前に出ると、急にやらなくなってしまう。本当はできるのに、「自分には無理」と逃げてしまう。「自信をもって」と何度伝えても、「もっとあなたはできるのよ」と声を大にして励ましても、なかなか届かないメッセージ。困惑してしまう親心もよくわかります。
子どもの自信なげな様子に、親としてどう関わっていけばよいのか、考えていきましょう。

目次:
褒めても自信をもたない?

自信が育つ3つの環境
  動いてみる
  「すごいね」「すばらしいね」の連発には要注意
  見方を変え、気づきを与える
子どもの感情を受け止める


褒めても自信をもたない?

 「良いところを見つけて褒めてあげれば、子どもは自信をもつでしょう」。子育て・育児書等に、よく書かれているフレーズです。自分のいいところに気づかず自信をもてないのなら、周囲が見つけて気づかせてあげることは、確かに自信につながりそうです。しかし、自信をもたせようとして褒めると、どうも上手くいきません。

「あなたは強いのよ。だから自信をもって!」
「勉強だってよくできるんだから、もっと自信もって!」

 これらの褒め言葉は、子どもにはどう伝わっているのでしょう。「あなたは強い」ならまだしも、「だから自信をもって!」がつくことで、子どもには「あなたは自信がない子だ」という意味合いに伝わってしまいそう。言えば言うほど、逆効果になってしまいかねません。
そもそも、自信をもたせることを「褒める」ことの対価として考えること自体に、無理がありそうです。自分に向けられた褒め言葉を、素直に受け取ることさえ、できなくなってしまいます。

 子どもの幸せを願うからこそ、親は子どもに自信をつけてもらいたいと願うのですが、自信とは「他者から言われて」もてるようになるものではなく、褒められたら自信が持てるというほど、人間は単純ないきものでもありません。「自信をもちなさい」と説得をするのではなく、安易に褒めるのでもなく、子どもが自信をもてるような環境を作っていくことに意識を向けていきましょう。


自信が育つ3つの環境
1. 動いてみる
 説得や助言では、子どもの心は動きません。自分が真にそう思うためには、誰かから、「あなたはできる」と言われるのではなく、自分で「自分なら大丈夫」と思えることが必要です。そのためには、自分で動いてみることです。
どんなことでも構いません。何かいつもとは違うことをやってみましょうか。例えば、誰かに出会ってみる。新しい声が聞こえてくるかもしれません。どこかに出かけてみる。新しい発見があるかもしれません。
行動することで、気持ちが前向きになれば、「自分なら大丈夫」と思えるようになりそうです。

2. 「すごいね」「すばらしいね」の連発には要注意
「ほめないで」
「そんなこと言ってもやらないよ」

子どもから言われたことはありませんか?「すごいね、さすがだね、素晴らしいね…」、例えば、こんな表面的な言葉ばかりを伝えられると、子どもは相手の言葉の意図を探ろうとするのでしょうか。拒否をしだすことがよくあります。
これらの言葉の連発には要注意。大人が評価者となってしまったり、親子の信頼関係が薄れてしまったりするからです。決まりきったフレーズを「褒め言葉」として伝えるより、「事実をそのまま伝える」ことに徹する方がよさそうです。
事実をそのまま伝えるためには、存在承認が役立ちます。存在承認とは、相手の存在自体を認め、伝えること。

「良く食べたね」
「お皿を運んでくれてありがとう」

こういった存在承認は、「自分は見てもらっている」という安心感につながります。

3. 見方を変え、気づきを与える
 世の中は「解釈」で成り立っています。私達が見ている社会は私達の解釈で感じ取っている社会です。ですから一つの事実に対して多様な解釈が存在するのです。子どもが「自分にはできない」と言うのなら、それは子どもが「自分はできない」という解釈をつけているからです。
見方を変えるとは、この解釈を変えるということ。「ダメだ」を「自分は大丈夫」という解釈に変えるためには、まずは本人の見方が変わる(解釈が変わる)ことが必要であり、そのためには、いわゆる「気づき」を与えることが求められます。
相手に気づきを与えるためには、「質問」が効果的です。自分の見ている世界とは異なる世界が見えるよう、視点が置きかわる質問をしてみましょう。

「できないって感じているんだね。どうしてそう思うか教えてくれる?」
「少しでもできていると感じることを教えてくれる?」

質問の答えを探すプロセスで子どもは自分を客観視し、自分の心と向き合います。この行為が、いわゆる「気づき」を促すのです。捉え方を変えていくのです。また、質問をされることで、子どもには異なる視点が加わります。今ある状況を多(他)方面から見ることで、気持ちが切り替わることもきっとあることでしょう。
質問をする際には、子どもの気持ちに共感する言葉も添えた方がいいですね。自分の気持を受け入れてもらうことで、子どもは安心して心を開くことができるようになるはずです。

子どもの感情を受け止める
 最後に、もうひとつだけ考えて頂きたいことがあります。「自信がない状況」って、本当によくない状況なのでしょうか。「自信がない」を受け入れることも大切なことと感じます。常に明るく元気で、常に自信をもって…これでは人間疲れてしまいそうですよね。時には凹み、自信をなくしてしまい、そんな経験をすることが、人の気持が分かる子、自分の弱さも引受けられる優しい気持ちを育てるのではないでしょうか。

 子どもを尊重し、いかなる子どもの心も受け入れること。子どもの「育つ力」を信じること…。子育てはこれにつきるのだと思います。

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